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副生徒会長の偽島メモから役に立たないものを盗み食い。 聖グレゴリオ魔術学園の騒動も盗み食い。
2018/07
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そろそろgdgdになってきましたが。
日記とメッセだけチキレで中の人は大変だったみたいです。


4.

 うにゃん、と黒猫のうち一匹が彼の右に従った。
 にゃおん、ともう一匹が彼の左に従った。
 そして僕の正面に彼――最悪最凶の黒猫、鳴瀬先輩が邪気のない笑顔で立っていた。
「紅掛君ー? こんなに可愛いにゃんこちゃんたちに向かって鎖鞭を振り回すだなんて一体どういう神経してるのですかー?」
「え……あ……いや……」
「しかも今僕にも微妙に攻撃しかけましたよねー」
 ねー、と相槌を打つように二匹の猫が鳴く。
「だ、だっていきなり出てくるから……!」
「僕に殺されたいのですか?」
 笑みは一瞬にして消え失せ、金色の大きな瞳が僕を冷たく見下した。半分は強烈な威圧感で、残り半分は刷り込まれた条件反射で、僕は思わずその場に片膝をつく。何処から来るのか解らぬ自信と生まれつきの唯我独尊思考でつい一、二年前まで魔術学園を支配していた元生徒会長・鳴瀬玲人。フリルたっぷりのふわりとした服に青い蔓薔薇の絡んだ蝙蝠の翼、その左手にはイングラムM11サブマシンガン――彼の姿を見て思考停止しない生徒など存在するのだろうか? その上睨まれたとあれば大概の生徒は震え上がる。僕とて例外ではない。寧ろ現生徒会委員が一番彼の恐ろしさを知っていると言っても過言ではない筈だ。何せ今尚実害を被っているのは僕たち自身なのだから。
「申し訳……ありませんでした」
「次は右腕を吹き飛ばす」
「――はい」
「良し」
 教授と草がきょとんとこちらを見ている。当然だ。その視線に気付くと、先輩は片方の黒猫を抱き上げ悪戯子猫の笑顔に戻って上品に会釈した。どんな演出効果のつもりなのか先輩の背後に大量に沸いて出た白薔薇の蕾が次々と花弁を開く様に、純粋な草たちはわいわいと喜んでいる。何やら「僕は新種の猫草です」だの「美味しい犬草があると聞いてやってきました」だの思い切り胡散臭い言葉を並べて教授まで魅了しようとしているらしい。折り悪く通りかかった犬に向かって「あれも植物です、何となく色が」等と無茶な事まで言っている。犬にしてみれば良い迷惑、牙を剥いて唸っているが、先輩どころか教授までが唸り声など何処吹く風と早速捕獲準備を始めている有様に僕は溜息をつくしかなかった。
「でも先輩……どうして此処に」
「んと、御崎君が心配してたから? 昨晩泣きついてきたって」
「え?」
 泣きついたは先輩特有の誇張表現としても、そもそも御崎に連絡などしただろうか。額に手を当てて昨晩の記憶を辿る。昨日はギルドの集会所に出向き、未琴や縫いぐるみの兎と言葉を僅かに交わした後、確か――

***

 離れた木陰で夕闇の中、毛布を被ったままぼんやりとしていた。そこへ入れ替わり立ち代わり数人のギルドメンバーがやってくる。何故彼らが取っ付き難いであろう僕に敢えて構おうとするのか、僕にはそのあたりが理解出来なかったが、味方を増やす為の作戦の一環と考えれば辻褄の合わぬ事もない。
 ……まぁクニーに言わせれば単に「珍しい格好をしてるので声をかけてみただけ」らしいが、まさか全員が全員その程度の理由しか持ち合わせていない程危機管理意識の低い集団だとは思いたくない。

 初めにやってきたのはロジュとその保護者だったように記憶している。ロジュの警戒は解けたようで元の笑顔に戻ってはいたが、それでもまだ若干の固さが残っていた。そして保護者――ジャファルは未だ険しい表情を崩さない。
「……気に障ったのであれば謝ろう。そなたが禍々しい気配を醸しているので、正邪の程を見定めんとしていたのだ」
 長命種らしい彼から見ても、僕は、もとい死神という存在は見て解る程禍々しいものなのだろうか。凶器を持てば人間も死神と余り変わらない気がするが。
「察するに害意はないようだが、我々との交誼に興ずるほどの好人物でもなさそうだ」
「一人の方が落ち着くので……」
 幸いというか何というか、現状では身近な生き物をうっかり殺してしまう事はないのだが、鏡の目がその他何らかの悪影響を与えないとも言い切れない。ならば必要以上に僕には近寄らせない方が小さな生き物の為だ。
「キだけでは殺せないのか? なんかキケンって感じしたけどな。見た時、ぞくってしたぞ」
「んん……そうかな。別に何もしていない」
 ロジュは疑わしげに僕を爪先から頭のてっぺんまで眺め、笑った。
「でも、そっか、ちょっと安心だ。お前フツウに戦ってるの見たし、フツウに戦ってるけど強そうだし、仲間だし。こんど一緒にやろうな!」
「仲間……」
 未だ違和感のある言葉にまた躓く。
「まぁ、機会があれば」
 じゃらり、と二メートルを超える鎖を手元に引き寄せる。先端に棘のついた鉄球、鎖の目の二つ三つおきに鋭利な刃物や魔動鋸、そして先に手に入れた蠍の尾が括り付けられたいわば人工の荊。今の僕を守ってくれるものはこれしかない。物理的にも――精神的にも。

 ふと目線をジャファルの背後に向けると、ロジュに用事でもあるのか、こちらの様子を窺う軽装の少女と目が合った。軽く顎でそちらを示すと、ロジュは「アカネ!」と元気良く呼び掛ける。こちらもまた以前からの付き合いがあるようだ。あちこちに『仲間』がいるとは全く羨ましい事で、と僕はまた樹に凭れる。
「……」
「……」
「……っ?!」
「こ、こんにちは……」
 ロジュとジャファルの去った後にぽつんと小さな子供が取り残されていた。ふわふわの頭にもさもさの脚、身体と釣り合いの取れない巨大な腕輪と斧と。
「牛……の角?」
 思わず口に出してしまった。猫人やエルフは時折見かけるが牛人を見るのは初めてだ。
 その彼が小さな声で「にゃんこ?」と呟く。
 ――にゃんこ?
 歩く天災を思い出させる単語に眉を顰める。
 ――どのにゃんこだ。

***

「その後えーと……軽く食事をして……眠たくなって……あー」
 思い出した。そういえば寝惚けて御崎に電話を掛けた、ような気もする。先輩は呆れたようにわざとらしく腰に手を当て、やれやれと首を振った。
「相変わらず眠たくなると挙動不審なのですね紅掛君は」
「そ、そんな事」
「前に寮内を夢遊病患者みたいうろついてたって聞いたのですよ? 御崎君から。あと真夜中にドォル君の部屋に押し入って寝てる顔にへのへのもへじの絵を描いたとか言ってたかなぁ。御崎君が」
 ――次に会ったらやっぱあいつシメる。
「そ、それは兎も角ッ……少なくとも此処の場所は言っていないと思うんですが」
「発信者の場所が判るように人形電話に予めGPS機能を埋め込ませて貰ったのです。勿論事後承諾で」
「あぁ、そうですか……もう良いです、何でも」
 僕が改めて深く肩を落とすと、先輩が何もないところから一枚の紙を抜き出した。
「そうそう。忘れないうちに、はい、これ預かりものー」
「……何ですかこれ」
「もう!」
 先輩は厚底靴でとん、と地面を蹴った。
「本当にねぼすけさんなのですね。紅掛君が自分で頼んだんじゃないですか、ポラロイドカメラの設計図っ! お陰で御崎君が半徹してたのですよ?」
「……ああ!」
 寝惚けても言う事だけは言ったらしい。メカ系に詳しい御崎に聞いておこうと思っていた、魔法陣の文様を記録する為のポラロイドカメラ、の類似品の作り方。
「折角届けにきてあげたのにー」
「申し訳ありません。有難う御座いました」
 つんと先輩はそっぽを向く。
「御崎にも伝えて――」
「自分で電話すれば良いのじゃないですかこのよわよわ死神!」
「よ、よわよわ?」
 疲労が溜まる一方の僕を尻目に、先輩は虚空からもう一枚の紙を引き抜いた。
「んーと。わー……ギルド名簿にビッケだのクニーだの……それよりやっぱ格好良い年上のお兄さんが良いのですよねー」
「何を、なさってるんです?」
「架空集団戦闘申込。洗脳科の課外実技名物なのです」
「そんなの……聞いてません」
「浅生先生が言う訳ないのですよ。口伝の試験のようなものなのですね」
「流石浅生、やる事が無茶苦茶だ……」
「だから僕も大して可愛くもない後輩にわざわざ教えてあげに来たのです。えとえと……顔写真ないけどまぁこの辺は外れないかなぁ。ロクロー・ランデプス、それとメロウ=メグニクっと。これで良しっ」
 耳馴染みのない名前が勝手に申込用紙に書き込まれ、止める間も無く再び虚空に消えていく。
「……格好良いお兄さん探しをしに来た訳じゃないのですよ?」
 はいはい、それが目的ですね。
 ――と言える訳もなく黙り込んだが、実際はそういう事だろう。先輩はそういう性格なのだ。先輩としての親切心と御崎の頼みでここまでやってくるような先輩など先輩ではない。
「ところで先輩、さっき先輩が喧嘩売った犬がまだ怒ってるんですが……」
「犬? 何それ? 僕関係ないもん。自分で何とかするのですよ。あーゆーれでぃ、とぅデーッド? オア! アライブ!」

 ――壬生教授、草と戯れていないでそろそろ助けてください。

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