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副生徒会長の偽島メモから役に立たないものを盗み食い。 聖グレゴリオ魔術学園の騒動も盗み食い。
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イベントがあったので台詞の反映は次回に持ち越し。
持ち切れなかったらごめんなさいという事で許してくださ……

話に絡めるのが難しい、です。


6.

 教授に協力を仰ぎ、懐いた黒猫を操る訓練を始めて一時間ほど。その間二度も教授の眼鏡にヒビを入れておいて得た結論がこれというのも何とも気が咎めるが、
「……駄目だ」
 猫として元々持っている戦闘本能を利用しつつ、洗脳により戦闘意欲を高める事で実戦への投入が可能となる、という理屈は解っていた。しかし強く洗脳すればする程元来の特性は失われてしまい、また半端に弱めればコントロールが難しくなる。このバランスを取るのは口で言うほど簡単なものではなく、おまけに余りそちらにばかり集中すると自分自身の行動を忘れてしまう危険があった。
「うーん、俺は専門外だから詳しくは解らないんだが……戦闘意欲の一時的向上じゃなくて、忠誠心とか、何かこうお前を守る方向に上書きしとけば良いんじゃないのか?」
「それには時間が掛かるし、常日頃から強制するのは好きじゃなくて。そもそも色々種類のある洗脳のうち、僕が得意なのはダウナー系、要は意欲を失わせる――今回のケースで言うならば戦闘を終わらせる方向性を持つ系統のものだから、手駒を操るより僕自身が先頭に立った方が手っ取り早い可能性が高い……」
 それに猫に忠誠心は多分、ないよ、と僕は首を竦めた。ドォルも確かに、と苦笑する。
「かと言って僕単身では教授の足を引っ張りかねないし」
「……厭な予感がするんだが」
「本能を残した状態で意識をコントロール出来るのが半封魂の特徴なんだよね」
「なぁ。俺が苦労して本体とこっち同時に動かしてるの覚えてるか?」
「感謝してるよ」
 シベリアンハスキーの首に両腕を廻すと、彼は唸り声を上げて腕を払いのけた。
「あにすんだ馬鹿野郎ッ」
「ペットの調教には飴と鞭、と聞いたから」
「今のは飴か? 鞭か?」
「え? うん……そうだ……ドォルが戦闘参加すれば問題は解決するんだよ。僕もその方が戦い易いし」
「俺は戦い難いッ」
 言われてみれば今朝辺りからドォルは少しバテ気味のような気がする。特に用事のない間はうとうとと眠っているようだし、受け答える声にも張りがない。
「元々お前の課題だろうが。洗脳で何とかしろよ。大体犬の身体でどうしろってんだ」
「その部分は本能的に犬の側が知っているから、ドォルはその力の向かう先を調整すれば良いんだよ。表層意識は君が、深層意識は依代が担当している状態だから何とか」
「なるかッ! 喋るので精一杯なんだよ、本体は今酒場に……あ」
「……ドォル」
 僕は呆れて彼を睨んだ。
「何度言ったら解るんだ、君は呑み過ぎ。死ぬよ」
「だーかーらーッ呑まなかったら即死するって、毎回そう言ってるだろ!」
「……」
 彼の瞳に映る数字を眺めて僕は目を伏せた。寿命は生まれつき決まっているように言われる事も多いが、選んだ行動によっては時に大きな変化を起こす。人生は常に選択の繰り返し――終わる時間は選び取った解次第。だが、その選択の先に待つものを死神は教える事が出来ないし、干渉する事も許されない。
「あぁもう……悪い、悪かったって。そんな顔されても困るんだよ」
 酒場からは今引き上げたから、とドォルは決まり悪そうに言ったが、どうせまた部屋で酒盛りでもするのに違いない。何せ彼はそういう国で育った訳で、僕がどうこう言っても遺伝子レベルでどうしようもないのだ、恐らく。
「目ぇ開けろって。その顔すげー怒ってるように見える」
「怒ってるんですよ……」
 自分自身の無力さに。死期が判るだけでは何も出来ない。
「……戦闘参加なぁ。取り敢えず試してみるから、頼む、機嫌直してくれ」
 大きく息を吸い込み、吐き出す。
「出来るだけ君に負担が掛からないように僕も気をつけます」
「慣れるまでは頼りにするぜ?」
 じゃあ少し休ませてくれ、と力無く言い、ドォルは僕の隣で再び眠り始めた。こちらで眠る一方で本体は活動していのだろう。
 ――ある程度予想はしていたけど……流石に生身の魂を封じるのは無茶だったか。
 多少のスパルタには適応出来るのが我が校生徒共通の特性、とはいえ――余りに辛そうならば矢張り猫と同じように術を使うべきなのかもしれない。
 そしてその時が来たら、ドォルの半魂は本体に戻さなくては。
「ん……あれ?」
 そういえば。
 ――封魂術ってどうやって解くんだっけ?

***

 長いトンネルのように変化の無い眠りから覚めると、そこはクリスマスタウンだった。
「雪国なのかNBCなのかはっきりしろ」
「……いや、あんまり吃驚しすぎてついうっかり」
 自分の居場所と定めた樹の周辺は勿論、遠くに見える山にまで一面に綿のような雪が積もり、見上げると凭れていた樹木もすっかり様変わりしている。紫と藍に染められた彫りの細かいガラスの飾りと蜘蛛の巣のような繊細な銀のリボンを纏ってきらきらと輝いていたのだ。何処からとも無く流れる厳かな聖歌が冷たい空気を凛と引き締め、ただでさえ現実味の無いこの遺跡から更にそれらしさを失わせている。
「もう聖誕祭か……学校の方は今頃お祭り真っ最中かな。ここでも祝うんだ」
「あぁ、言われてみりゃあ先週辺りから寮が電飾で大変な事になってるな。夜なんか明る過ぎて不眠の訴えが絶えないらしい」
「ははは。毎年恒例だね」
「俺はあんまり関係ないから良いけど」
 よ、とドォルが立ち上がるのに合わせ、僕も軽く身震いしながら身体を伸ばす。
 ――今何だか、違和感が。
「お前その、その服……どうしたんだ?」
「え……何時も通りで特に替えては……あれ、な、何?」
 鞄から鏡を取り出して引き伸ばし、その姿見を樹に立て掛けて覗き込む。身体全身を覆う青味がかった肩布に、背中からは純白の翼――
「て、天使……?」
 からん、と上の枝から金色に輝く輪が落ちてきた。良く見るとその側面には繊細な装飾文字で生誕を祝う言葉が書き連ねられている。
「……間違いなく天使の輪だな」
 荘厳で美しいメロディーとはまた別の方向から、明るく楽しげなクリスマスソングが聞こえてくる。音に耳を澄ますと、どうやら発信源はギルドの方角であるようだ。
「行ってみようぜ、竜胆」
「う、うん……」

 金管楽器や鈴の音の鳴る賑やかなクリスマスパーティー。その中に数人のサンタクロースもどきが半分は楽しそうに、また半分は解せないという顔をして立っている。
 チャイブが僕に気付いて駆け寄ってきた。
「あははやっぱり、竜胆さんは『天使』だったんですね。わたしもー」
 彼女は金の輪を頭の上に掲げた。自分のものとは少しデザインが違うようだ。
 教授はどこだろう――と見回す間も無く何かを抱えたサンタな教授が目の前を駆け抜けてゆく。
「教授は張り切ってるみたいですよー。それにほら」
 彼女が指差したのはビッケとロジュだ。トナカイの角をつけた二人は物珍しそうにツリーの飾りを眺めたり、手を伸ばしたりしている。ここの樹々は先程僕がいた場所のものとは違い、赤や金を基調としたカラフルな色と玩具で飾り付けられている。そこにいる人間の雰囲気で装飾も音楽も変わっているのかもしれない。
「目が覚めたら……全員こうなっていたんですか?」
「そうなの。不思議ですよねー。あ、ルッコラ!」
 先日巨大化して僕を驚かせたばかりのルッコラが、可愛らしく頭に星の飾りなどをつけてぺたぺたと歩いていた。チャイブは彼(かどうかは知らないが)を追い、何か耳打ちをする。ルッコラは「もさぁ」と返事をして、再びぺたぺたと去っていった。
「ふーむぅ……何でかは解らないが遺跡には聖誕祭を祝うシステムがあった」
「そして僕も彼女たちも――巻き添えを食ってこの姿に」
「ふっ……似合ってるぜ? それにお迎えに来るって意味じゃ天使もしにが」
 僕は慌ててドォルの口を押さえる。
「その事はまだ内緒にしてるんだ」
「……も、似たようなものだろう。いっそ自称天使になれば?」
「何も変わらないよ」
 相変わらずだなぁ、とシベリアンハスキーが頬に頬を擦り当てる。
「理屈は良いや。楽しみな、折角なんだし」
「じゃあドォルも一緒にね」
 テーブルの上にあったシャンパンを取り、彼に向けた。
「いやそれえーと子供用のあっまーい奴だぜ確か。……ま、良いか。こんな状況でお前にお酌して貰える奴なんてきっと俺が最初で最後だ」
 深皿にシャンパンを滴らす。ドォルは二三尻尾を振ってすぐに飲み干してしまった。
「お前も飲めよ。苺味、しかもノンアルコール。酒じゃねぇ苺ソーダだ」
 ぼう、とシベリアンハスキーに被るようにドォルの姿が浮かぶ。彼は掬い上げた雪から細身のグラスを二本作り出し、一方を僕に渡した。流石錬金科万年二位の実力者、ほんの数秒で作り上げたグラスは良く見るとリンドウの花を模している。そのグラスになみなみとロゼワインのような紅に透き通る液体を注ぐ。
「メリークリスマス、竜胆?」
「……うん。メリークリスマス」
 カツン、と氷のグラスを鳴らすと、ドォルは一気に飲み干してさっさと姿を犬の中に戻してしまった。シベリアンハスキーは目を閉じ、眠たそうに前足を揃える。
「はー……ちょいやりすぎた。しかもクソ甘ぇ。んじゃ、後は俺抜きで何とかしとけ。必要になったら起こせ」
「……有難う」
「気にすんな」

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