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副生徒会長の偽島メモから役に立たないものを盗み食い。 聖グレゴリオ魔術学園の騒動も盗み食い。
2024/03
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中の人は遂にメッセージの反映を諦めたらしいです。
何でも全部使おうとすると3000とか4000とかってレベルじゃなくなるからだとか。
それ以前にギルメン以外との会話はシチュエーションの問題で無理だと僕は思ってましたが。
余り外に出ていくタイプじゃないから何とかなると思われていたに違いない。
関係ないけど、毎回小ネタを混ぜるのはやめて欲しい。心底やめて欲しい。

そういえば今回は妙なミスもありました。
育ちが西洋なのに何故か『除夜の鐘』とか言ってます。新年を祝う教会の鐘が正解です。
見なかった事にして転載後も修正してくれないようなのでここで愚痴っておきます。
それからアリスにHappyUnbirthdayはないですよね。
原文通りなら寧ろ僕は喜ぶんじゃないかと思うんですが……
多分鳴瀬先輩は某アニメのアリスしか見た事がないとかいう設定なんでしょう。


7.

 聖誕祭の乱痴気騒ぎはあともう少しだけ続くらしい。お祭り好き――というより、これもまた一種の気晴らしなのだろう。気色の悪い巨大生物に襲われながらの探索を思うと、時にはこの程度の遊び心でも持たないと先が続かないというのも解る。
 それにしても。
「皆元気だなぁ……」
 ジャファルは「和気藹々とした歓談は得手ではない」等と言いつつ案外輪の中心に陣取っているし(ロジュのお守りの為なのだろうが)、どこからどう見てもノリが良いとは思えないクニーやメロウ、未琴までもがも何だかんだで場に馴染んでいる。嬌声に歓声、そして相変わらず走り回る教授。実に楽しそうだ。
 僕だけが、寮で迎える聖誕祭と違い『全員が揃っている』という状況から生まれる違和感と戸惑いを拭えずにぼんやりしていた。
 毎年この時期になると殆どの生徒は実家へ帰ってしまう。だから残された生徒は憂さ晴らしに過度の装飾をしてみたり、上下関係は無礼講で悪戯や嫌がらせを仕掛け合う。そういった暇潰しの大騒ぎをするのが聖誕祭なのだと思い込んでいた部分があるからだろう。

 ――元々魔法使いなんて存在自体が基督教から見れば異端だしね。

 カラフルな光の輪から抜け、青紫と銀の樹の下で再び膝を抱えた。ドォルに貰ったほんのり苺の味のついた氷のグラスを少しずつ齧りながら爪先を眺める。冷え切った肌は、これで人間と言い張るにはそろそろ無理が出そうな程真っ青になっていた。妙に勘の強そうな縫いぐるみもいる事だし、そろそろ気を付けなければならない。
「あーもうまたか……どうしてそうすぐ隅っこに逃げんだよ全く」
 不平を垂れながら気だるげに戻ってきたドォルを、すかさず手を伸ばして抱え込む。
「ぬくい」
「ばっ……やめろ苦しい!」
「何だかこのところ熱量が足りなくて」
「だからって俺の体温を奪うな死ぬッつーかお前何食ってんだよ」
「……氷……」
 ヒトに似た姿をしてはいるが、死神には食事は必要ないし当然食欲もない。仮の姿を保つ為に必要なものを適当な手段で取り込みさえすれば、困る事はなに一つない。だから僕は何年か前までは滅多に食事を摂らなかった。
 それが変わったのは寮に入って、何も食べないという訳にもいかなくなってから。一日に三度も出される食事は残せば良いとしても、それではエネルギーを通常の倍以上も消費する過酷な授業に身体がついていけない。だがまともにものを消化した事のない僕にとっては食事自体も負担でしかなく――試行錯誤の結果、周囲に溢れる熱エネルギーを利用する事にしたのだ。単なる熱エネルギーではなく、生気の通ったイキモノの熱エネルギーを。
「そりゃ原料は雪だけど今は一応食器なんだぞそれ……」
「でも美味しい」
 そんな中、唯一すんなり受け入れる事が出来たものがぬるい水。消化の必要も肉体への負荷も殆どなかった為だろう。やがて液体に慣れ、固形物も多少食べられるようになるに従って、味を分類し好きか嫌いかを判別出来るようにもなった。
 冷たいものは美味しい。熱いものは痛い。
 甘いものは美味しい。辛いものは痛い。
「……お前の味覚って適当だからなぁ」
 かりかりと少しずつグラスを齧る僕をドォルが一層呆れた顔で見上げ、溜息をついた。

***

 一面が華やかな銀世界になり、浮き足立った人々と妙に殺気立った人々の間に深い溝が出来た聖誕祭から数日。遺跡は大分元の状態に戻りつつあるようで、祭りの後のどこか草臥れた雰囲気になっていた。そろそろ年明けという事でまた別の盛り上がりはあるようだが、流石に聖誕祭には遠く及ばない。
 僕にとっても新年を祝うのは聖誕祭で騒ぐよりも縁の遠い話で、今年も喪中につき年末年始のご挨拶ご遠慮申し上げます、の一言でお仕舞い。皆ゆっくりと死に近付いている、そんな事を改めて思い知らさせる季節行事の筆頭など好きになれる訳がない。誕生日の歌の次に嫌いな除夜の鐘の音。
 先輩が口ずさんでいた『なんでもない日万歳』というフレーズを思い出し、余計に憂鬱になる。
「そういやお前、この前の夜何処行ってたんだ?」
「ん……?」
 溜息をつきつつ新たに見つけた魔法陣を上手い具合にカメラに収める調整をしていたところに、漸くそれなりに現状に適応し始めたドォルが声をかけてきた。
「この前……あぁあの晩か。ちょっと気になる人がいて、尾行してたんだ」
「そりゃ珍しいな。隠密は上手くいったのか?」
「いや、バレちゃってた」
「駄目じゃん」
 僕は首を竦める。
「でも結果的には悪くなかったよ。知り合いも出来たし。凄い破壊力のエルフに、熱血少女に、事情はわからないけど終始からかわれてる人――それに僕のターゲット」
 はっ、とドォルが笑った。
「更に珍しい。明日は槍が降るな」
「……むぅ」
 確かにドォルの言う通り、僕が自ら進んで人前に出て行く事は稀だ。けれど、それはただ交流とやらが苦手なだけで別に人が嫌いな訳ではない。出来る事なら友達は欲しいし、体力や精神力が追いつけば――そして死神と知られていなければ、ある程度頑張る事だって出来るのだ。
「ほらたまには……身体も動かさないと、ね」
「ふぅん。まぁ良いけど。で、この袋は何だ? 良い匂いがするんだよなぁ」
 振り向くとトランクから引き摺り出しされた綺麗にラッピングされた袋を咥えるドォルの姿があった。
「ちょっと、何してるんだよ。勝手に鞄開けないでくれる?」
「なーなー副会長ー、これ何ー?」
「五月蝿いなぁ。そこで会った人にこの前貰った」
「依代の嗅覚がこれはうまいものだと言っているんだがッ」
「……中身はクッキー」
「良し、寄越せ。たまには美味いもん食わせろこの味覚音痴」
「や、やだよ! ゆっくり一口ずつ食べてるんだから」
 ドォルの表情が僅かに曇った。
「ちょっと待て、これ何時のだ?」
「聖誕祭で貰った」
「聖誕祭から何日経った……? もう湿気てるんじゃね?」
「湿気る?」
「空気中の水分を吸ってふにゃふにゃになるって事」
「え、そうなの? でも水は火で炙れば蒸発するんじゃないのかな」
「それはない。早いとこ食べてしまわないと大事にしたことが裏目に出ると思うぞ。勿論俺は手伝おう……!」
 ドォルにはドッグフードを上げたじゃないか、と荷物を漁る。だが見当たらない。どうやら既に隠されてしまったらしい。
 その間に、ドォルはもう一つの大きな袋を引っ張り出してきていた。
「そ、それは何?」
「毛布の中に隠してあったぞ。えーと送品者が壬生サンタ舜匡? 手紙がついてるな、えーと『メリークリスマス、約束の品だよ』だと」
「……あ……」
「美味そうな匂いはしないが取り敢えず中を改めさせてもら……」
 横から無言で袋を取り上げた。心当たりがある。少し前に教授が壬生研のエプロンをあげよう、と言っていたのだ。但し、女物しかない、とも言っていた。万が一先輩が良く着ていたようなエプロンドレスか何かだった日には――ドォルに知られる前に処分せねばならない。
 だが。入っていたのは少々怪しいロゴとルッコラらしきイラストがついている他は、若干リボンが大きめなだけの極めてオーソドックスな型のものだった。僕はほぅ、と胸をなでおろす。
「良かった……案外普通のエプロンだ」
「何だ、お前中身知ってたんだ? MIBU KEN……あぁ、あのヒゲ眼鏡の先生んとこの。欲しかったのか」
「いやそういう訳じゃないんだけど、くれるって言ってたから」
「……で、着るの?」
「まぁ、折角貰ったんだし一度くらいは着るべきかなぁと思ってるよ。これくらいなら特に動きが制限される訳でもないし」
「……」
「どうしたの、急に押し黙って。そんなに変かな」
「それはちゃんと中身を確認した上で言ってるんだよな。つまり――着るんだな?」
「……え?」

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