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副生徒会長の偽島メモから役に立たないものを盗み食い。 聖グレゴリオ魔術学園の騒動も盗み食い。
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ジャファル後編。
丸投げ返し余り僕が干渉出来る話でもないので深くは切り込まず。

そろそろハムスターの名前も決めてあげないと動かせないのでそっちを出しつつ
これ以上知り合いにうろつかれても困るんだよなぁ。
人口密度が高すぎる。


14.

 凡字に似て非なる文字が螺旋状に連なりジャファルの魂魄を覆っていた。文字――とも記号とも表現しにくいそれは周囲の光を呑み、薄暗い室内にぼんやりと浮き上がっている。
 ついと手を伸ばして文字らしいものに触れると、中へ引き込もうとするような力が指先に加わった。慌てて引いた手を良く見ると、爪の先が黒く焦げている。

 ――呪い。守備範囲外だ。

 だが僕は安堵し、軽く溜息をついた。

***

 状況を把握する為には今から少々時を遡ってみる必要がある。僕はギ妖精から受け取ったメモと地図に頼り、纏いつく冷気の中、白い息を吐き宿へ向かった。宿屋の方では事情は大体把握しているらしく、ギルド名を出すと多少不吉なものを見る目をしながらもすんなり彼の部屋の鍵を渡してくれる。

 部屋の前に立つ。と、扉の隙間から流れ出る『匂い』が気になり始めた。
 吐き気を催す、血を焼く時のあの匂い。
 ぎぃ、と扉を開けると、その『匂い』が部屋一杯に充満していた。
 恐らく彼がこの状態になったその時から既に臭気は漂っていた筈だが――
 冥界から囁き呼び掛けるこの匂いには、この世の者はまず気付けまい。
「ジャファル」
 無駄を承知で呼び掛ける。部屋は閉め切られており薄暗く、空気そのものも余り良い雰囲気とは言えない。一度ぐるりと部屋全体を見回してから、僕は一つ息をついて目を閉じ、開いた。
「失礼」
 どうせ意識はない相手、とも思いつつ両手でジャファルの頭を少し持ち上げ、親指を瞼にあてて押し上げた。視線は並行のままで像を結びはしないが、僕にとってそれは然程問題ではない。
 瞳の中にはごちゃごちゃと沢山の数字が犇いている。それらの数字を読み取るまで暫しの間顔を寄せて、至近距離且つ一方的な睨めっこ。

 + **,***,***,***

「残命時間はプラスの数字……よって『生きていてよい生物』と判断する」
 手を離すと、彼の頭ががくりとベッドに落ちた。
「けど、さっぱり『生きているようには見えない』。魂は何処だ?」
 死神は残命時間のみで死ぬべき時を見定めるが、たとえその時間がプラスであっても魂魄が消滅してしまっては意味がない。
 ジャファルの魂魄は内にはない――もしも近くにすら存在しなかった場合は。

 眉を寄せてジャファルから視線を外したその時。視界の端に一段と昏いものが浮き上がるのが見えた。彼の足元近く、ベッドの向こうにゆらりと立つ影――何かにびっしり覆われたジャファルの魂魄。
 僕は若干驚いて首を傾げた。
「ずっとそこにいました?」
『……』
「いや……さっきはいなかった筈。今も生気は殆どノイズ程度にしか感じ取れていない」
『……』
「呼び掛けられて現れた?」
『……』
「んー、ある程度の意識はある、だが喋れない……という状況と見て良いのかな……」
『……』
 ジャファルらしい黒い影は黙して動く気配もない。
 代わりに半分慣れて麻痺していた嗅覚を匂いが再び刺激した。不意をつかれて咳き込みながら、そっと影に近付く。影の表面がざ、とざわめき動く。
 この黒いものは何だ、と鼻を近づけたところで僕は三度匂いに阻まれた。今度こそ口から泥でも吐きたい気分になる。が

 ――そうか、コレが匂いの発生源だったか。

 間近で見た黒いコレの正体はジャファルを彼の世へ呼び寄せんとする意思を持つ文字の集合体、即ち呪い。匂いの強さから推察するに、相当強力な呪詛に彼は魂を縛られ引き離されようとしている。が、恐らく、猛烈に抵抗してるのだろう。そうでなければ彼の残命時間があれほど長い訳がない。そして何れ、呪詛を撥ね退けて戻る。

 ――最悪の場合の為に出張ってきたが――空振りだな。

 僕は小さく自嘲した。
 もっとも、彼が呪縛を抜け出すのが何時になるかまでは解らない。
 枕元に戻って本体の瞳を覗くと、ガラスに先ほどと全く変化のない数字が映る。分刻みで動く筈の数字が止まってしまっているようだ。

「ジャファル、聞こえてはいるのですよね?」

 黒い塊は相変わらずそこに佇んでいた。姿を見せているのはジャファルの魂魄自体の意志ではなく寧ろ、彼を縛る呪詛が僕に興味を寄せているから、なのかもしれない。何しろ、動機は異なれど僕もこの呪詛も『命を奪う事』ただそれだけの為に存在するものだ。呪詛が僕に何らかの無駄な期待をした可能性は否めない。
 だとしても、彼がこちら側に戻ろうとしているのは事実だ。もしどこかで諦めていたならばとっくに死んでいる筈。

「聞こえていると信じてる。――ロジュワルディの残命時間の消耗スピードが貴方がいた時の約五倍に増加しています。つまり彼女は貴方を心配するあまり5分のエネルギーを1分に注ぎ込んでしまっている。保護者失格、ですよ」

***

 宿の女将に鍵を戻した。容態はどう、と聞かれ、僕は曖昧に肩を竦める。

 帰り道、朝方にロジュと交わした会話を思い出した。
『そういえば、夢を見た。竜胆が、空飛んで、ドアをすりぬけて、ジャファルのそばに立ってるんだ。それから水をジャファルの体に注ぐんだ。そしたら水のかかったところから、赤い火みたいなカタチの花が咲いた』
 それは彼岸の光景に似ていた。亡骸に三途の川の水を掛けると全身から美しい彼岸花が咲き溢れ出すのだ。そして最後に、干乾びた死体があの川原の土となる。
 ロジュの思考がマイナスに偏っている証だ。

 ――こっちの方が緊急だ。

 さっきの話を聞いても尚今のペースで呪を突き破っていくつもりか?
 無責任かもしれないが、今の所僕に出来そうなのは片方を励まし、片方を焚き付ける事くらいしかない。だから僕は、それを実行にうつした。

***

「ふーん、そんなに強力な術師ってごろごろいるもんかね」
「さぁ、ただそういった厄介な呪術者は大概死んでも死んでくれないから……」
 再び遺跡内に戻る為の準備を整えながら僕は見たモノの話をドォルにしていた。面倒ごとは放っておいても寄って来るから自分からは触れない、と言い切るドォルにしては珍しい話なので聞かせているが、途中からはどうも眠たそうにみえる。
「……もう休んでも良いよ?」
「あー……?」
「眠そう」
 綺麗な犬はぶるぶると首を振って長く息を吐いた。
「今ので疲れはしたが別に眠たい訳じゃねーよバーカ。これからアイツが来るぜ」
「あいつ……ってだ」
 言い終わる前に部屋の窓がぴし、と音を立て、続いて壁や棚が軋み、灯りが明滅する。
「――ッ……ポルターガイスト?!」
「うん」
「って事は」
「お久し振りですRIP。あんた少し女っぽくなった?」
「九頭龍――」
 オールバックにした黒髪に切れ長の目、神経質そうな表情の少年、の生霊が目の前に立っていた。聖グレゴリア魔術学園生徒会書記、呪術専攻、九頭龍雷斗。
「ドォル先輩に頼まれて来ただけなんだからそう驚かないで下さい。しかし確かにこれは酷い、酷い鈍感っぷりだ。御祓いが必要ですね」
「?」
「右手中指。見舞い相手から拾ってきた呪詛が巻きついてますよ」
 言われた途端、これで今日四度目のあの匂いが今度は自分の指先から立ち上った。
「……!」
「不用意にあんなものに触るからそうなる」
 焦げた、と思った爪の先に、今は例の文字の断片が張り付いていた。その範囲はじわじわと広がっているようで、第二関節あたりまでは既に文字で覆われている。
「これが我が身かと思うと流石に少し気持ち悪い」
「滅茶苦茶冷静ですね」
 雷斗は苦笑して文字を覆い隠すように濡れた護符を巻いた。その上から更に固定用の白い布を巻き付け、縛る。
「痛いって。何か凍みる」
「痛まなくなったら剥がしても大丈夫です」
「それまでは俺に触んなよ」
「えぇ……にしたって何で僕まで呪われなきゃならないんだ」
「お前が邪魔したからだろ」
「あれを邪魔というなら他の見舞い客だってとっくに呪われてるって」
「余計な事でも言ったんじゃないですか?」
 またもぴしぱしと部屋中のものが騒ぎ立て、雷斗の姿が崩れ始めた。
「ドォル先輩が気付いて僕に相談した事に感謝すべきですよRIP。幾ら貴方でもそう簡単にボディチェンジは出来ないんだし――あ、そうそう、では約束通りドォル先輩、それは使わせて貰います」
「あぁ。手間掛けたな」
「では失礼」
 雷斗が消える、と同時に背後の金網でキィッと耳障りな声がした。
「んのヤロふざけやがって……あぁん? ここは何処だ? お前ら誰? つーか……」
「ハムスター……深催眠状態にしておいたのに、何時の間に」
「深催眠と憑霊って相性良いんだってよ。悪霊を飼い慣らすまでに使う生身の檻としてサイコー、だそうだ。てな訳で礼代わりに暫くあのハムスター貸切にしたから宜しく」
「えええええ」
「えええええ」
「るせー! 同時に喚くな!」

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