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副生徒会長の偽島メモから役に立たないものを盗み食い。 聖グレゴリオ魔術学園の騒動も盗み食い。
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mana様は中の人が大好きらしいですよ。
あと死神は必要に応じて増えたり減ったりするものらしい。です。

死神設定は俺設定なので他の死神の方とは無関係です。アタリマエダ!

殺したい相手云々はネヴァ舌が言ってました。
三倍返しの呪いは誰に聞いたんだったかなぁ……黒さがリズさんっぽいけど(ぼそ
付き返すはマズいと言ったのは多分ジョゼさん。だと思う。

本当に突き返したら別の種類の神になれる気がする。


12.

 世間が浮き足立っている。
 聖人ヴァレンティヌスのお祭り――の東洋版、が近いらしい。
 クリスマスと同じで、勿論存在そのものを知らなかった訳ではないが僕には余り縁のない話だ。生まれが東京の先輩がそういえば「ほんめいー」だの「ぎりー」だの言って騒いでいた気はするが、基本的に寮内で何か祝った覚えはないし、興味もないから周囲が何かをしていたとしても気付かなかったのだろうと思う。
 僕の認識では、ヴァレンタインディとは根付いて精々百年と少し程度しか経っていない歴史の浅い習慣で、恋人とプレゼント交換をする日、である。念の為ドォルにも確認してみたが、矢張り似たようなものだと言っていた。
 しかし外に出てみると随分様子が違う。

 殺したい相手に宣戦布告として贈り物をするのだとか。
 受け取ってしまうと三倍返しの呪いを受けるのだとか。

 しかもそう言って顔を輝かせているのは大概が女性である。男性はといえば、一部を除き憂鬱そうな表情をしているし、また別の一部はいっそ女装して呪いを掛ける側になろうと企んでいるときいた。

 ――それじゃ恋人同士でプレゼントを贈り合う日って誰が言い出したんだ?

 全然違うじゃないか。マレフィセントが「夢も魔法ももう御仕舞だ」等と言っているショーを思い出して僕は苦笑した。少なくとも一つ前に別の人間の身体を模して過ごしていた頃はこんなに殺伐とはしていなかったような気がするのだが。

***

 一つ前の僕の身体は、今は骨となって多分何処かの共同墓地の中。野戦病院で残命時間の切れた人間を始末しているうちに何時しか補給路も退路も絶たれ、兵士と共に死んだ従軍看護婦。思えばあの頃が近年では一番死神らしい行動をとっていた。尤も兵士たちからは天使呼ばわりされていたのだが。

 『灰色の目をした東洋の少女』
 『彼女の黒髪は鴉の濡羽のように髑髏の紋章に良く似合う』
 『モノクロのカードから抜け出した死の天使』

 『エンゲル・リーリエ』

 最初にそう呼んだ兵士の顔は覚えていない。余りに沢山の人間がそこにいたから、そして皆が似たような顔をしていたから。
 だが一つ確実に覚えているのは。

 最期くらい、彼らに甘美な夢を見せたかった。

 それだけ。
 血と硝煙と消毒薬の臭いの中で、陸の孤島となった野戦病院を文字通り死守した――しようとした、か。結局叶わなかったのだから――瞳の中の数字がゼロを通り越した彼らは一体何を見ながら逝ったのか。
 土煙か血煙か、信じる神か守るべき祖国か。
 地獄のような現実か。

 陥落されたのは丁度ヴァレンティヌスの祝祭の日。
 リーリエが最期に口にしたものは一口分のショコラーデ。
 敵兵を目前に皆で回し飲みした、泥のような飲み物。
 そしてそれから――天使はP08を手に取った。
 七発は敵兵への贈り物、一発は自らへの贈り物。

***

 ――どれも良い香りだったけど。

「あの頃はこんなに殺伐としたものじゃなかったんだけどねぇ」
「別の意味で殺伐としまくってるじゃねぇか。それ第二次世界大戦とかその辺りの話だろ」
「ん、WW2の東部戦線。……いや、まぁ戦争中は僕のような死神でも流石に忙しいんだよ、死に損ないが多いからさ。ちゃんと墓に入れてあげないと収拾がつかない」
「真顔で言われても。つか東部戦線って西部戦線の事か?」
「あぁ、ロシアから見るとそうなるのか。ま、忙しいのは事実」
「そうなんだろうけどさ」
 それにしたって、とドォルは顔を顰めた。
「もう少しすると甘ったるい匂いで凄い事になるんだろうな」
「え、この流れでそっちの話になるの? ――うん、確かに」
 つられて僕も少し眉を寄せた。甘き死の疑似体験を喚起する香には気をつけていなければ、ふとした瞬間に意識が欠けてしまう。不便な身体だ。
「一応デュィルさんはカードとか花とかオーソドックスな話をしてたけど……淡雪さんは友が何とかかんとか……最早男装している事を忘れているよね、淡雪さん」
「ん? あぁ、あの胸がないのに胸が目立つスーツの」
「ドォル……どこ見てるの」
 ごふ、と咳払いして犬は別にぃ、と姿勢を改めた。
「で――郷に入りては郷に従えというらしいけど、お前もまたお祭りか参加? つーかクリスマスは兎も角、そもそも俺ら男子校じゃ殆どどうでも良い位置付けの日じゃね?」
 僕は小さく首を竦める。
「勝手がわからないよねぇ。でも、もう面倒だから片っ端から付き返すつもりでいたらそれはやめとけってさ。文献調べてみたけど食べ物を下駄箱に入れるとか机に隠すとか匿名で呼び出すとか、どう見ても嫌がらせイベントなんだけどねぇ。僕が居た頃の日本はこんな国じゃなかったんだけどな」
「つーかお前、それ以前に貰えない可能性があるんじゃ、仕様として」
「……取り敢えず怨まれるような事をした相手は皆死んでると思うけど」
「死んだから怨まれてるんじゃ」
「るさい殺すぞ」
「殺せない癖にっておい目がまた鏡になってる!」
「……」
「……俺が悪かった」
「一般的な風習としての交換をする約束はしたから、ゼロはないしそれは付き返すつもりもない」
「……何時の間に」
「この間。って事でドォル、ちょっと力を貸してくれると嬉しいんだけど、良いかな」
 一瞬厭そうな表情をしたように見えたのは気の所為か。彼は、何、と限りなく透明に近い蒼の半魂姿で僕の前に立った。

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