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副生徒会長の偽島メモから役に立たないものを盗み食い。 聖グレゴリオ魔術学園の騒動も盗み食い。
2018/10
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……今何処かで誰かに小一時間問い詰められかけたような悪寒が。

制服は教授のデザインじゃないそうで。
じゃあまさか助手(とロジュが呼び掛けてるのを聞いた気がする)の人の趣味か?
ドォルは腹を抱えて大笑いだし、僕は余計寒いし、
というか見えないように隠してるけど、足元は足袋と下駄なんだよね……。

クニーがこの姿見て「女で良いじゃん」とか言ってたけど
僕は過去に一度も女性であったことがない、とは限らない、そういえば。覚えてないだけで。
そもそも死神にとって性別なんて余り意味がないからなぁ。
ラテン語も何時の間にか覚えてたけど、殆ど定型句しか判らない事を考えると
多分墓碑から学習したんじゃないかな。

という話がどこかでつながる予定なんだけど次回挟めるのかどうか。
文字数関係でまた中の人が呻いてました。ていうかもう好き放題だな、完全に。


9.

「Et sunt sua fata sepulchris...」
 竜胆がどんよりと恨めし気な顔で俺を見た。
「いやいや勝手に殺すな」
 こいつが暗いのは何時も通りだ。無表情でなければ怒っているように、そうでなければ何処か哀しそうな表情をしている何とも陰気な後輩。今もそれに変わりはない。何を考えているか判らない、だから苦手だという生徒は多いようだ。が、実は。
「Mors certa, hora incerta」
 混乱するとラテン語で喋り始めるのでそれを知っている者には解りやすかったりもする。本人にその自覚がない、というより何時何処で覚えたかも記憶にないらしいが、兎にも角にも彼が目下大変な混乱状態にある事だけは確かだ。
 まさかあの髭眼鏡のオッサンがこんな面白いものを送ってくるとはなぁ。
 ……いや、案外アレで本気なのか。

 という訳で今日一日だけ俺、つまりドミトリィ・ドォルが後で課題の途中経過報告をする時の為にメモを取っておいてやろうとこうしてペンを咥えている訳だが――

 目の前に純白のフリルの覗く膝下丈のワンピースにファンシーなエプロンをつけた副会長が半ば茫然自失の状態で突っ立っているのでは集中するどころか紙に文字を書くことすら出来ない。余りの物珍しさに、というのもあるが、彼の全身から溢れる疲弊オーラが俺の意識までをも蝕んでいると言っても良いように思う。
 元々竜胆は細身であるし、腕毛だの脛毛だのというもっさりしたものとは無縁のすべすべな白肌だから、見て精神的にダメージを受ける事はない。手に持っている凶器さえ何処かに隠しておけば、赤の他人からならば清楚な女学生と勘違いされる事請け合いだ。
 俺が言うのも何だが、リボンやらフリルやらでごてごてになっている鳴瀬(こいつの場合は意図的に女装――というか奴基準で可愛いものを着ているのだが)ばかり見慣れてしまった目には最早保養の域にあると思う。多分鳴瀬の可愛いとは種類が違うんだろうな。これはこれでアリだと思うんだが、まぁ、んな事竜胆に言った日には俺の地獄逝きが確定してしまうかもわからんよね。

***

 勝手に書き込みをしているドォルからノートを取り上げると、うげ、と叫んで彼は何処か遠くへ逃げ出してしまった。どうせここから半径20mより先へは行く事は出来ないよう術を掛けてあるので放っておくが。
 何を書いていたのやら、と書き掛けのメモを見てから(流石に犬の身体では解読可能な文字は描けなかったようだ。残念)僕は頭が割れそうな程の頭痛と隠し切れない羞恥心を払いのけるように髪を結び直した。
「お揃いだねっ」
 チャイブは何の疑問も持たずエプロンをつまんでにっこり微笑む。教授に渡された壬生研のエプロン、とその付属らしい制服。研究室に何故制服があるのか、一体この格好が何の役に立つのか、僕にはさっぱり解らない。だが確かにチャイブは同じ服を着ているし、すぐに出てきたところを見ると規定服である事は間違いないようだ。
 ――取り敢えず、足が寒い。
「そう、だね……」
 上着代わりの白振袖を肩に掛け、僕は曖昧に笑った。きちんと帯で結んでしまえば無理に脱がされない限り服装を見られる事はないだろう。が、生憎帯の類は手持ちがない。いっそ鎖で巻いて留めてしまっても良いのだが、それでは戦闘中に武器もなく身動きもとれないという事になる、という事は、結局はこの格好のまま鎖鞭を振り回すしかないのだろう。
「ついでに花冠とかもどうかな?」
「え、えぇー……それは竜胆の、だよね。聞いた事すらないよ……それに僕、やっぱりあの花言葉は好きになれないし」
「『誠実』『貞節』『とっても家族を大事にします』」
「でももっとメジャーな花言葉は――『悲しんでいる貴方が好き』『寂しい愛』」
 僕は言葉を区切って小さく肩を竦める。誰に名付けられたか記憶にないが、その人物の目には自分がそう映っていたのかもしれない。
「まだあるよ、『日当たりが悪いと花が咲かず、枯れてしまいます』……他の花だって何時かは枯れるのにー」
「それは花言葉じゃなくて育て方の話なんじゃ」
 あ、そうか、とチャイブは得心がいったようにぽんと手を叩いた。
 というか、もうすっかり歩行雑草扱いされているのだがどうにかならないものか。
「……いっそ咲かずに終わるのも」
「駄目だよーそんなの! 何時までも木陰でぼんやりしてちゃ枯れちゃう枯れちゃうっ」
「うわ!」
 ルッコラとチャイブの体当たりを受け、僕は日向に投げ出された。反射的にワンピースの裾を振袖ごと押さえる。
「何と言うか……フラグ立て間違えたよね、絶対」
 仕方ない。僕は鎖鞭と鞄を手に、よろよろと教授たちの後について岩山へと足を向けた。

***

 もう何度目になるか、数える事を諦め始めた夕暮れ。
 気付けばまた持ち物が一つ二つ増えている。そのうちの片方、数日前眠っている間に枕元にさり気なく置かれていたのがこの『焼肉セット』。焼き網に炭に肉の詰め合わせという、この島ではかなりのご馳走に分類されそうなものだ。何しろ此処に着てから口にしたものはパンくずと草と水、目にしたものを含めても精々蚯蚓肉くらい。僕は兎も角ドォルは飢えに飢えている、らしい。
「りーんーどーうー! 良いから早く焼け、食わせろ!」
「まだ炭火があったかいからヤダ」
「火が消えたら肉が焼けねぇ!」
「えー……どうせ犬なんだから生で食べれば良いじゃない」
「お前は何も解っていないな。焼いてない肉は焼肉にならないだろうが」
「……生焼けの場合は何て呼ぶの?」
「は?」
「生焼肉?」
 暫く黙った後、全ッ然訳が判らん、と呟いてドォルは勝手に肉の包みに手を伸ばした。まぁ無理を言って此処に呼び寄せたのだ、たまには彼の好きにさせてやっても良いだろう。何より僕ではこれを消化し切る事が出来そうにないのだし。悪くならないうちに彼が喜んで消化するならば、きっとその方が贈り主も喜んでくれる。
「お前は本当に食わないのか? 元はお前宛だろ」
「ん……じゃあ少しだけ齧る。ウェルダンで宜しく」
「これはステーキじゃねぇんだよ」
「豚のステーキはトンテキって言うんだって。初めて知った」
「あのなぁ。さっきからてんで話が噛み合わねぇ……また何かあったのか。そういや昨晩もまたいなかったよなお前?」
「え、と……月がとっても青いからー」
「朝帰りは遠回りとかいうレベルじゃねぇぞ」
 僕は言葉を濁して誤魔化し、トランクを膝に抱えて目を閉じる。開けたままの鞄の奥から覗く髪飾りが、炭火の不安定な光を受けて溶岩のようにぬめりと光った。

 ――悲しんでいる貴方が好き。

「……強ち間違ってもいないのかもね」
「何が?」
 気にしないで、と苦笑混じりに答えると、ドォルは少しばかり神妙な表情で焼肉に向き直る。
「明日から生徒会の方、かなり大掛かりな活動始めるんだろ。今夜はさっさと休めよ」
「そんな事、美味しそうなものを目前にして言われてもねぇ」
「ロクに食えない癖に」
「代わりに僕は香りを楽しめるんだよ。ドォルこそ何も解ってないな」
 冗談めかして言ったつもりだが、返ってきたのは意外なフレーズだった。
「Difficile est tristi fingere mente jocum」

 その後。ドォルは匂いに釣られてやってくる牛っ子やら野生児やら良い歳をしたスカーフェイスやらを撃退しつつ、一匹でまるまる一食分の肉を平らげて満足げに眠りについたらしい。僕はそれより前に眠ってしまったから、そこでどんな必死な争いが繰り広げられたのかについては知るところではない。

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