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副生徒会長の偽島メモから役に立たないものを盗み食い。 聖グレゴリオ魔術学園の騒動も盗み食い。
2017/10
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唐突な過去話。裏設定がりがり。
なんかまぁ僕も昔は色々あったのですよ。
そんなこんなで色恋沙汰は駆け引きを楽しむものとしか思ってません。
良く太夫にまでなれたねって?
うん、知識は兎も角芸を覚えるのは結構大変だった。

そういやどこぞの平民みたいな書かれ方されちゃっててちょっと可哀想なんだけど
この人は大店の次男坊なのでした。


10.

「遂に身請けが決まったかい」
 新吉原は賑やかで、三味線の音も良く響く。人払いした部屋の中、朱塗りの杯を戴いて、ほんの僅かな笑み浮かべ、太夫は首を傾ける。
 ――あなたさまには大層お世話になりんした。
「鶴見屋の旦那も幸せモンだ。……しかし花魁、本当にいっちまうのかい?」
 ――あのお方も悪い人じゃァござんせんよ。
「は、振袖新造の頃から見初めた俺の立場がねェや」
 ――またそんな顔して愚痴ばかり、あちきァ面白くないわいな。
「俺の気にもなってみろってンだ」
 苦笑を漏らす男の目には読み取れない程渦巻く数字。太夫は密かに安堵の溜息をついて杯を返した。

 外はそぼ降る雨も止み、掃けた雲の向こうに細い細い月が覗いている。

 ――今宵これにて最後の逢瀬、せめて笑ってくだしゃんせ。
「あぁ、それもそうだねェ。わざわざお月さんまで見届けてくれるたァ気が利いてらァな。月に群雲花に風、櫻庭太夫も散り時か」
 見上げる月に似た切れ長の目を閉じて、男は肩を竦めた。
「それじゃ俺も散るかねェ」
 桜が風に散るならば、椿はすっぱり首を落とすがまた相応。彼は呟いて自嘲する。
 ――そんなに後味の悪い思いをあちきにさせる御積りかぇ?
「さァ如何したもんか。花魁は今も俺を好いていてくれているのかい」
 ――本心なンぞ何時どこぞに捨てたやら。待てども待てども迎えに来ずはあなたさまの方でありんすわいな。
「そうかい、そりゃア有難うよ、その言葉で腹が決まった。それじゃ花魁」

「遅くなったが迎えに来た。足抜けしてくれ、今これから」

 す、と開いた目の中に『68』のたったの二文字。太夫は息を呑んで凍り付く。

「今の時間なら裏ァ人目もねぇ、花魁にその気があるってんなら」
 ――あちきは長く籠の鳥、外になンぞ――

67


「身請けだって籠から出るに変わりァねぇよ。サァ」
 ――最後まで粋なお方と。

66


 ――思っていたのに。

 最早引き返す事が出来ない場所へ、男は既に飛び込んだ。
 ならば止めても仕方ない。

 刻々と減り続ける男の時間を涙一つ零さぬ哀しい目で見遣り、太夫は男に手を重ねた。道など全く判らない。ただ引かれるままに、男の死に場所へ走る。誰にも気付かれぬ訳もなく、何時しか追っ手の声を背に、それでも廓から見た櫓へ向かって、月に向かって、只管、走る。
 そして最期の時がきた。
 恐らく鶴見屋の若衆の凶刃。男の顔は血に塗れ、間に入った太夫もまた袈裟に斬られて虫の息。男は太夫の腕の中で満足げににやりと笑った。

0


「はは、花魁と一緒に死ねそうだ。こりゃあ全く縁起が良いや」
 ――馬鹿なお人がいたもので。

-1


「馬鹿で良い。嗚呼、でも花魁、お前さんを」
 ――もう、御喋りなさんすな。

-2


「死なせるつもり、は、なかった、すまない、ほんとうに」
 ――すぐに楽になりんすぇ。

-3


「櫻庭、お前さん、天女だろ」
 ――あちきはつくづく……人間が厭になりんした。

 そこで男の一生は終わった。
 鏡の目に男を映して、太夫の身体もまた時を止めた。

 人間の身体から抜け出した死神はそれから暫く人間の真似事を止め、江戸から、日本から立ち去った。

***

「最近お前目が虚ろじゃね?」
「毎晩こんなじゃ疲れもするって」
 毛布を被って僕は口を尖らせる。こんな事なら御崎に頼んで鞄を拡張しておいて貰えば良かった。先輩の棺桶型の家のように、何もかも鞄に詰めて持ち運び出来ればそれ程便利な事はない。流石に愛用の鞄のサイズでは中が部屋でも自身が出入り出来ないが。
「相変わらず夜中はほっつき歩いてるしな。誰だよ俺に酒呑むなっつっときながら酔っ払って人に送らせやがったのは。……つーか誰だよ、あいつ」
「いやぁ、その辺はあんまり覚えてないんだよね」
「誤魔化す気だな」
「で、でも僕よりタチ悪い酔っ払いもいるし?」
「大して酔わない俺のが偉いと思う」
「仕方ないじゃないか、煽られたら呑むしか」
「そのタチ悪いヤツも煽られたんじゃないの、勘だけど」
「……まぁおいといて」
 おいとくのかよ、と律儀に突っ込むドォルに耳を塞ぎ、僕はここ数夜の慌しい出来事を思い返す。
 ――異様に袖を引っ張られるのはあの時以来か。
 人間の寿命なんて死神から見れば数回瞬きする程度の時間。それなのに、或いはそれだからこそか、彼らは意志を固めると妙に強い。良く言えば強いが、悪く言えば無謀。目の前で、一瞬にして死期が訪れる無常を知れば、自然人間と深く関わるのも怖くなる。
 人間に限らず、短命種は無謀が過ぎる、と思う。先輩なんかはその好例だ。彼の場合は精々三十年生きられれば長生きの部類だから、逆の意味で周囲の人間とは上手くやっていけないらしいし、思いついた事はその場で何でも試してみる。先がないから今。多分それが短い時間しか持たない者の考え方。
 無限に近い時間を有する者とは思考回路が違うのだ。
 解り合う事すら、今の僕は諦めた。

「ドォル」
「んあ? 寝入りばなに声掛けんなよ」
「君は余り無茶をしないでね」
「大乱戦でお前より立ってる程度に無茶してねー」
「……それはそれでなんかムカつく」

***

 ところで、教授がエプロン(+ワンピース)を着て草を追い掛けている夢を見た気がするんだけど、夢だったんだろうか。あれは。
 夢であれば良いのだが。
 今日は確か、ギルドで何やらおでんパーティーをするのだと、矢張りこれも教授が言い出して物凄く嬉しそうに巨大な鍋を準備していた気がする。
 夢であれば……

「おでんってヤポンスキーボルシチの事だよな」
「違うッ!」

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